文章を書く前の準備 第1章

外出先に向かうとき、Googleマップや乗換案内を検索してから出かけますよね。

文章を書くときも同じ。目的地を定め、経路を確認してから出かけるのが得策。でも文章となると、いきなり書き始めてしまう人が多いのです。たまたまうまく書き上げられればラッキーですが、迷い始めたら最後、無限に時間を費やすはめになります。

 

第1章では、文章を書く前の段取り方法を1~14に分けて説明していきます。

 

 

 

1. 良い文章は完読される

良い文章ってなんだろう?

 

その答えは無数にあります。

でもそれだと学びが難しくなってしまうので、ベテランになるまでの間は、たったひとつの万能解を掲げ、そこへの到達を目指すことにします。そのマジックワードは、「完読」です。ここでは完読される文章=良い文章ということに設定します。

 

・おしまいまで読ませる難しさ

逆に、完読されない文章とは何でしょう。文章が分かりづらい?テンポが悪い?間違いだらけ?自分の役に立たない?内容と比べて長文?雑誌でもWebでも、ページをめくるか閉じてしまいますよね。

私を含め、近年のネットユーザーは長文への耐性が低下しています。

だから私たちは文章力磨かないと、断片的な情報しか渡せなくなってしまいます。

こらえ性のない読み手に情報を不足なく、メッセージを手渡しましょう。

 

・目標を掲げて腕を磨く

本当のことをいうと、良い文章は「時と場合による」ものです。

でも初心者のうちは、目指すべき状態をはっきり見定め、迷いなく腕を磨いていく必要があります。

だから、まずは文章を完読させることが大事なんです。

 

 

2. 完読される文章は完食されるラーメン

完読される文章=良い文章と設定しましたが、これを目指すにあたって、「完読」という概念を「完食」に置き換えると理解しやすい。ここでは、誰でも馴染みのあるラーメンに例えて説明します。

 

あなたはラーメンをどんなとき、食べきれず残しますか?

多すぎる、麺ののどごしが悪い、虫が入ってる、食べたかった味じゃない、味が濃すぎなどラーメンに例えると矢継ぎ早に回答が出てくると思います。文章でいうと、文章が長すぎる、リズムが悪くてつっかえる、誤字脱字がある、求めていない内容、主張が強すぎるなどに言い換えることができます。つまり、完食されるラーメン=完読される文章ともいえます。

 

適切な長さ、旬の話題、テンポがいい文章。事実に沿った内容、言葉遣いに誤りがない、表現にダブりがない文章。読み手の需要に則した押し付けがましくない文章。もちろんこれだけではないですが、こんな文章なら引き込まれますよね。

 

 

3. 文章は目に見えている部分だけではない

「完読」を目指すために、まず文章の多層性について知っておく必要があります。森の地面が落ち葉、腐葉土、黒土と層になってるように、文章も概念のレイヤーが積み重なってできています。

 

いちばん表層のレイヤーに、目に見える「言葉遣い」。言いたいこと、伝えたいこと、こうだからゆえにこうなると言いたい「論理」。出来事や日にち、人やものの名前、行為、場所などの「事実」。この3つのレイヤーは、取り返しのつかない順序で積み重なっています。

 

実用的な文章力をレベルアップするには、事実・理論・言葉遣いの順番に積み上げていく思考を身につけることです。

 

 

4. 必要なものはテーマと主内容

事実・理論・言葉遣いについて話をしましたが、理論の書き方をここでご説明します。

理論的に書くために私は、「書き始める前にテーマと主内容を立てること」だと答えます。

 

テーマとは、その文章で何を言うのか、何を言うための文章なのかという目的のことだと思ってください。そしてテーマを達成するための骨組みを主内容とします。文章における主内容は、要素・順番・重軽の3つから構成されます。

 

書き始める前にテーマを決め、何を・どれから・どれくらい話すか決める。これを私は、構造的記述と呼んでいます。

 

 

5. 悩まず書くためにプラモデルを用意する

突然ですが、丸太とノミを渡されて、「これでガンダムを作りなさい」と言われたらどうしますか?もしくは紙粘土を渡されて「これで宇宙戦艦ヤマトを作りなさい」と言われたら?私だったら途方に暮れてしまいます。

でもこれがプラモデルだとどうでしょうか。パーツ・取扱説明書・箱絵が3つセットになってパッケージとして成り立っており、出来はさておき小学生でも完成にこぎ着けれます。

なぜプラモデルあ簡単で間違いがないか。それはあらかじめユニット化されたパーツが用意されていて、箱絵で完成イメージを確認した後、取扱説明書の指示通りに組み立てられるからです。つまり、作文をプラモデル化すればいいんです。

 

箱絵を「どんなことを伝える文章なのか」、パーツを「何を言うか」、取扱説明書を「どこから」「どこを重点に」に置き換えます。つまり、箱絵=テーマ、パーツ=要素、取扱説明書=順番・重軽という具合です。

更に「書き始める前にテーマと主内容を立てる」を言い換えると、「作文をプラモデル化しておく」ということです。

 

 

6. 書きたい話題を箇条書きにする

「作文をプラモデル化しておく」と言いましたが、具体的には、これから書こうとしている文章に含まれそうな話題を箇条書きで書き出す作業で説明していきます。

事実ベースの文章は、事実をどんどん書く。手紙やレビューのような主観を述べる文章なら、何を思い感じたのか箇条書きにして書く。でもこの段階では順番や整合性は気にしてはいけません。まずは手持ちの話題をリストアップすることが大切です。

 

5W1Hの法則に沿って事実を揃える

事実を揃えていくときに便利なのが、Who(誰が) 、What(何を)  When(いつ)  Where(どこで)  Why(なぜ)  How(どうやって)の5W1Hの法則。

決して万能ではありませんが、いま持っている情報に何が欠落しているのかを考える際に役立つことが多いです。パーツを揃えるときの抜け漏れチェックに5W1Hは有用です。

 

・材料を取ってくる、すなわち「取材」

書くためのパーツを用意することを私は「取材」と呼んでいます。本来は、材料を取ってくるというシンプルな意味です。書きたい文章が事実ベースではない場合にも重要です。

主観を述べる際の取材とは何かと考えると、それは「自分にインタビューをすること」だと私は思います。

 

 

7. 文章のテーマを設定する

文章を書き始める前に、必ずテーマを決めます。これは文章を書く上で絶対条件です。

テーマを別の言葉に言い換えるとコンセプト、または切り口とも言います。

 

・文章のオリジナリティは切り口に宿る

自分の頭で考え、テーマを決め、切り口を提供しているのなら、そこにはオリジナリティが宿っていると私は考えています。

 

 

8. 文章の主内容を組み立てる

テーマが決まったら、次は主内容を固める作業です。

主内容とは要素・順番・重軽、もしくは「何を、どれから、どれくらい」だと説明しました。その中でも大切なのは、要素・順番・重軽の順に決めること。この順番を間違えると迷い道に入り込んでしまいます。

 

用意した要素から、順番の作業に入ります。ストーリー設計をし、おしまいまで読者の注意力を途切れさせないように並び替えます。

軽重の作業では、その話題ををどれくらい重点的に語るか、さらっと流すか。私はABCの3段階評価で見定めています。

 

 

9. テーマと話題を「構造シート」でまとめる

安定して書き続けるためには、時間を減らす工夫が必要です。

書き始める前にテーマと主内容を固める、プラモデル化の一連作業を決まった流れで紙に書くことを、私は「構造シート」と呼んでいます。

 

< 構造シートの作り方 >

 ➊ 紙の上部にテーマを書く欄を作る。

 ➋ 箇条書きでこれから書く話題を挙げる。

 ➌ 並べた話題から、これから書く文章を見定め、テーマ欄に書き込む。

 ➍ どの話題から切り出すべきか、テーマを基準に吟味し、項目の左横に順番を数字で書き込む。

 ➎ 新しい紙の上部に再度テーマを書き込み、項目を順番通りに並べ直す。しっくり来なければ、再度吟味して並べ替える。

 ※順番通りに書き直すことで、全体の流れがクリアに認識され、仕上がりのイメージが明確になります。

 ➏ アピールしたい優先度を、項目の右側にABCの3ランクで格付けする。

 

構造シートの練習は必ず手書きで行ってください。最初からパソコンを使うと、テーマと主内容を打ち込むことに疲れてしまいます。

 

 

10. 話題はテーマに沿って取捨選択する

主内容の立て方の補足として、集めた材料をすべて使わない、つまり取捨選択の考え方が必要です。

主内容を組み上げる際には、捨てる判断が必要とされる場合もあります。

取捨選択の基準をテーマに即しているかどうか、伝えることに奉仕できているかを軸に置いて判断してください。

 

 

11. 結論・要約を最初に提示する

主内容とは要素・順番・重軽、もしくは「何を、どれから、どれくらい」と書きましたが、一番思考に時間が掛かるのは順番です。

理由は、話題の項目とテーマから、どの話題から話すか決めないといけないからです。

 

大事な話題から言うとは、文章を最後まで読みたくなるような、魅力的な一段落を最初に持ってくることです。

 

< 結論・要約を最初に提示する構成例 >

結論 → 問題提起 → 状況説明 → 付帯情報

 

冒頭で読者の興味を引きつけ、関心をキープしたまま、目標である完読までこぎつける、これがネット時代の基本装備だと考えています。

 

 

12. 構造シートの内容に肉付けしていく

準備した構造シートにはタイトル案と、文章の順に幹となる部分が既にできています。あとはこの幹を膨らませながら、文章の状態にまで修正をします。構造シートに肉付けするだけで、言葉はつたなくとも言いたい事は伝わる文章になるのです。

 

 

13. 完成度よりも全体像の把握を優先する

構造シートの内容に肉付けしていくと書きましたが、それでも手が止まってしまう瞬間もあります。そんな時は次に書き進めて、修正は後からやることをお勧めします。完成度が低くても、おしまいまで書き通すことが大切です。

2,000字を超える文章を書く場合は、文章そのものをいくつかパート分けして、コマ切れして構造シートを書いていきます。

 

・人に話す気持ちで説明してみる

それでも手が止まってしまったら、多くの原因は構造シートに潜んでいます。構造シートに矛盾や破綻があると小手先の言葉遣いでは修復が効きません。

見直す際には、書いた内容を人に話してみること、相手がいないときは心の中で誰かに説明してみましょう。

人に話すことで難所がどこにあるか、それはどういう原因なのか、アウトプットの形態を変えることで分かることがあります。

 

 

14. 構造シートを繰り返し書く

ベテランの方もいきなり書き始めたのではなく、瞬間的に心の中に構造シートを立ち上げ、書き込み、その後書き始めています。そのためには、まず構造シートを埋める練習から始めてください。

書き直しがなくなる日を目指して「ボンヤリ書く、直す、気付いてうまくなる」の繰り返しで徐々にレベルアップします。